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 ←短編 これは、夢 →短編 変態博士のらぶらぶ日記
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名も無き物語

短編 補い

 ←短編 これは、夢 →短編 変態博士のらぶらぶ日記
俺は、耳が聞こえない。
だから愛しいお前の声が聞こえない。
数年前にお前と一緒に事故をやってから。
俺の世界は変わった。
出来る事なら――
もう一度だけ、お前の声を聞きたい。
俺の事が好きだって。
そんな事を言うお前の声が聞きたい。



僕は、目が見えない。
だから君の顔を見る事が出来ない。
数年前に君と一緒に車で事故を起こしてから。
僕の世界は変わった。
出来る事なら――
もう一度だけ、君の顔を見たい。
僕を愛しそうに見つめるその顔を。
君の瞳に映る自分をもう一度見たい。



俺の世界は無音。
お前の姿は見えるけど。
お前の目は見えない。
お前はずっと目を閉じてて。
お前の目に映る自分は見えない。
でも、それでいい。
俺は、耳が聞こえないからお前が何言ってるかわからない。
――そう、思うだろ?
俺にはわかる。
お前が何を言ってるのか。
お前の口の動きを見てたら、何を言ってるかわかる。
俺の記憶の中にある、お前の声がちゃんと聞こえるから。
お前の言ってる事は、わかる。



僕の世界は暗闇。
君の姿は見えない。
でも、君の声は聞こえる。
君の声を頼りに、僕は生きてる。
何も見えないはずなのに。
君の声を聞くと、光が見えるような気がするんだ。
でも、どうして君の声が聞こえるんだって思うよね?
君は、数年前までは普通に耳も聞こえてたから。
ちゃんと、目も見えていたから。
そういう人は耳が聞こえなくなっても。
ちゃんと喋れるんだって。
だから、僕には君の声が聞こえる。
君の声に、僕はちゃんと返す。
例え聞こえていないとしても。
いつだって、言ってるんだよ。
「大好きだよ」
そう、いつも言ってるんだよ。



俺は、いつもお前に触れている。
そうじゃないと、お前が不安だろうから。
どんな時だって、俺はお前の傍に居る。
ちゃんと、手を繋いで隣に居る。
だから俺は、そんなお前に言った。
「俺が、お前の目になってやるよ」
俺がそう言うと。
お前は微笑んでから。
「ありがとう」
そう言ったんだ。


君は、いつも僕に触れていてくれる。
僕もそうじゃないと不安だからありがたいんだ。
だって、何処を探しても君の手がなかったら不安じゃないか。
僕は視覚以外の聴覚、嗅覚、触覚、味覚でしか君を感じられないから。
君を感じるには、残された四つの感覚を使わないとダメだから。
だから、人込みで君とはぐれたら――
僕は、どうすればいいかわからなくなるよ。
だから本当は、外に出るの怖いんだよ。
でも、隣に君が居てくれるから僕は大丈夫。
「俺が、お前の目になってやるよ」
君がそう言ってくれたから。
君が、僕の手を強く握っていてくれるから。
僕は、大丈夫なんだよ。
「うん、ありがとう」
君となら、視覚では見えない世界が見えるような気がするんだ。
目の見えない僕だから、そう思うのかもしれないけど。
なら、君にもそう思って欲しいな。
だから――
「じゃあ、僕が君の耳になるね」
僕がそう言うと少しだけ君の返事はなくて。
でも、繋がれた手にはちゃんと力が篭もってて。
それから。
「ああ、そうだな」
少し、嬉しそうな君の声が。
「お互いに、補って生きていこう」
「そうだな。俺達は、ある意味一人なんだな」
その言葉が、嬉しかった。
僕達は、二人で一人。
そう思えたから嬉しかった。



足りないものは、お前が補えば良い。
足りないものは、君が補ってくれれば良い。
そうやって、生きていけば良い。
段差があった時は。
「段差、あるから気を付けろ」
車の音が聞こえたら。
「車、来てるよ」
そうやって、補えば良い。
そうやって、支え合って生きれば良いんだ。
きっと、この役割はお前にしか出来ない。
これは、君にしか出来ない役割なんだよ。
お前だから、成り立つんだ。
君以外の人なんて、考えられない。
なぁ、お前にはどんな世界が見えてるか?
ねぇ、君にはどんな綺麗な音が聞こえる?
きっと二人が感じた世界を合わせれば。
それはとても綺麗な世界になるんだろう――





「ねぇ、ご飯作るの手伝おうか?」
君の袖を少し引いて言ってみる。
「ぅあっち! ちょ、急に手ェ引くな馬鹿! 汁が手に掛かっただろうが! いや、手伝わなくて良い! つーかお前見えないだろうがよ!」
「でも調味料とかなら取れるよ?」
「んー、じゃあコショウ頼む」
「はぁい。あ、入れようか?」
「いや、い――」
ドバァと鍋にコショウが大量に入るのが視界に入った。
「あぁあああぁぁぁああ゛!!!!! おまっ、ちょっ…おまァァァァァァァ!!!!!」
「え、何?」
なんか今、コショウの蓋が緩かったような気がする…。
「と、とりあえず――お前は向こう行ってろ……。料理は俺がするから」
「僕だって、出来るんだからさ!」
「場所は――覚えてるだろうけどさぁ。いや、あの…危ないから!」
あ、今呼び鈴の音が聞こえた。
「誰か来たよ」
「――――」
あ、今背中向いてるから聞こえてないんだ。
じゃあ、玄関に行って来ようかな。
――コイツは危なっかしい。
家の中の構図は覚えてるから足打ったりはあんまりしねェけど。
それでも、たまにしてるけど。
生活出来ないほどじゃねェけど。
料理だって、出来るっちゃ出来るけど。
とりあえず、今のスープを飲んでみて。
「辛っ!! おい、ちょっとこれ飲めねェぞ。どうする? 作り直すか?」
――――あれ、あいつの気配がない。
「お~い、何処行ったァ?」
くっそ、気になるじゃねェかよ。
「ああ、ごめん。郵便屋さんが来てたよ」
そんな事を言いながら、お前が台所に戻って来る。
「おお、そうか。つーかそうならそうと教えてくれよ」
「あ、やっぱ飲めない?」
「頼む、今度から蓋が緩んでたら直――いや、俺が直しとくから。緩んでるなって思ったら俺を呼びに来てくれ」
「自分でも直せるよ」
「じゃ、直してくれ」
「じゃあそうするね~」
「で、これなんだけど――どうする?」
「――辛いの?」
「――――飲んでみるか?」
少し小皿にスープを注いでからお前に渡す。
「ちょっと、熱いからな」
「ん~」
そして、それをお前が飲む。
「辛っ!!!!」
そんな、目の見えない男性と耳の聞こえない男性の物語。
そんな二人の、日常生活。
お互いに補って。
この二人は生きております。









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