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名も無き物語

短編 瑠璃色の海で

 ←短編 瑠璃色の海 →短編 すれ違いの中で
俺には、兄貴が居た。
兄貴はすごく綺麗に泳ぐ人で。
兄貴は俺の憧れだった。
俺も兄貴のように泳げるようになるのが夢だった。
でもある夏の日。
突然やって来た嵐で兄貴は行方不明になった。
その時、俺も一緒に居て。
大波に俺が呑まれそうになった時。
兄貴は笑って言った。
「俺の分まで、生きてくれ」
そして、波に呑まれた。
俺は、兄貴が大切だった。
何よりも大切だった。
でも、それは恋愛感情じゃなくて。
ただの、憧れ。
でも俺はその日から泳ぐのをやめた。
水に入る度に、波に呑まれた兄貴を思い出すから。
それに、俺はあの時思った。
兄貴は人魚だって。
すごい、泳ぎが綺麗だった。
まるで滑るように泳いで。
綺麗な顔立ちに綺麗な声。
それに、俺のために海に呑まれた。
――俺のために、泡になった人魚。
俺は兄貴の事を人魚と例えていた。
そんなある時。
俺は沖縄の方に引っ越した。
それからすぐだ。
どうしてかその日俺は、泳ぎたくなった。
沖縄の綺麗な海を、泳いでみたいと思った。
泳いで、兄貴のようになりたいと思った。
だから、泳ぐ事にした。
でも気が付いたら自分が何処に居るのかわからなくなった。
無我夢中で泳いでて。
もしかしたら、このまま泳いで行ったら兄貴に会えるんじゃないかって思ってた自分も何処かに居た。
日が暮れてきて、俺はとりあえず陸に上がる事にした。
そこで、俺は出会ったんだ。
ハイビスカスの咲いているトンネルの奥。
草が生えてて、座るとチクチクして。
空は綺麗な瑠璃色で、綺麗に瞬く星々と満月。
海は綺麗な瑠璃色に空を映していた。
静かな波の音が、俺の心を癒していって――
そこには、一人の少年が居た。
どうやら寝ているようで。
目尻に、涙を浮かべて悲しそうな顔をしている少年が。
こんな幻想的で綺麗な光景の中で。
その悲しそうな少年がすごい魅力的に見えた。
そこで俺は、その少年に恋をした。
一瞬で、俺はこの場所を気に入った。
それから少しずつ、俺達は仲良くなっていった。
俺があの場所に行くとお前は笑って俺を迎えてくれた。
でもお前は。
俺が来るまでの間はずっと、悲しそうな顔をする。
酷い時なんか、泣いてたりする。
その姿を俺は、隠れて見ていた。
だから、聞いてみた。
「お前、前に来た時も泣いてたよな」
するとお前は涙を拭って海の綺麗さに感動しただの言い出す。
そんなわけ、ねぇだろうが。
だったら、どうしてそんなに悲しそうな顔――すんだよ。
なんで、声を殺して泣いてるんだよ。
でも、俺が何を言ったってそいつはきっと答えてはくれないだろう。
そう思っていると急に。
「――人魚?」
そいつが、そう言ってきた。
一瞬、何が言いたいのかわからず。
「海から、来たんでしょ? もしかして、人魚?」
そう言われて、俺は笑う。
俺が人魚?
俺の何処が人魚だよ。
兄貴みたいに綺麗には泳げねぇし。
俺は、人魚なんて存在とは程遠い。
兄貴の足元にも俺は及ばない。
「綺麗じゃん。人魚みたい」
そう言われて、正直嬉しかった。
こいつは、俺の何処を見て綺麗だって言うのかわからなかったけど。
俺自身が人魚だって言われた事がなくて嬉しかった。
まぁ、確かにそう思うかもな。
いつも泳ぎに来て、休憩をしにここに立ち寄る。
海から来るから、そりゃ人魚だと思っても仕方ないよな。
でも、俺には足がある。
声だって出る。
泡になんか、ならねぇぞ。
その日俺は、そんな事を思った。
それから色々と話して色々な事を知った。
誕生日が同じだって知って、運命だと思った。
俺は、同じ誕生日の奴に会った事がなかったから。
それに、好きになった奴は特に居なかったからな。
しばらく楽しく話してたのに。
急にそいつが、悲しそうな顔をした。
それを見て、俺は思う。
その悲しげな顔に、俺は惚れた。
正確に言えば、泣き顔に惚れた。
でも、正直俺の目の前でそんな顔はして欲しくねぇ。
出来る事なら、全部言ってくれないかと思う。
俺に出来る事ならば、何でもしたい。
それで、お前が笑うならば。
そう思って、言ってみた。
「お前はどうしてそんなに悲しそうな顔してるんだ?」
するとお前は驚いたように自分の顔を触って。
「そんな顔してる?」
してたから、聞くんだろうが。
「言ってくれ。そうしたら、少しは楽になるだろ?」
お前の願いを、叶えてやりたい。
お前の笑顔が、見たい。
そう思って聞いたのに――
お前は悲しそうな顔をして。
「僕、人魚と初めて逢った時……恋人だった人にフラれたんだ」
想像していなかった事が、お前の口から出てきた。
「僕なんか要らないって。向こうが僕の事を必要としてくれたから、僕を強く求めてきたから――僕はそれに答えてただけなのに。すごい、好きだったのに……」
そう言って、月明かりに照らされて輝く透明な真珠が。
数個落ちていくのが見えた。
「大好きなんだ……。どんなに酷い言葉で突き放されたって、どんなに傷付けられても――僕はまだ好きなんだ……。まだ、愛してるんだ……」
そう言って、お前は泣いた。
嗚呼、なんだ。
俺の恋は、最初から叶わなかったのか。
なんだ。
俺の入る隙なんて、なかったのか。
なんだ……。
その恋人って、なんて奴なんだ。
どうしてこんな奴を、傷付けて簡単に捨てる事が出来るんだ。
こんなに想われてるってのに。
嗚呼、そいつがムカつく。
目の前で泣いているお前を俺は。
気が付いたら抱き締めていた。
嗚呼、これで最後だな。
きっと、お前と会えるのは――最後だ。
それを知ったら、俺はもうここには居られない。
お前の傍にはもう――居られない。
お前が俺の事を人魚だって言うなら。
人魚は人魚らしく。
愛しい人のために泡になってやろうじゃねぇか。
そう思って俺は。
「その恋人の目――覚まさしてやるよ」
そう言って、お前を強く強く抱き締めた。
嗚呼、お前を俺のものに出来たら。
どんなに良い事だろうか。
俺が人魚だって言うならお前は――
俺だけの王子だ。
俺はその王子のために、泡になる。
愛しい人の幸せを願って、泡になる。
ただ、それだけだ。
兄貴が俺にしてくれたように。
大切に想った人のために、消える。
ただ、それだけ。
そこで、初めて気付く。
流れ星が、綺麗だという事に。
流れ星というものを、俺は初めて見た。
流れ星がとても、綺麗なものだと知ったその日――


翌日。
俺はお前の恋人だった奴の所に行って言ってやった。
「どうして、あんな良い奴を捨てたんだ?」
そいつは俺を見て、笑って言いやがった。
「そりゃあ、鬱陶しいからに決まってるだろ。鬱陶しくなったら捨てる。当然の事だろ?」
その言葉を聞いて、お前の姿が脳裏に浮かんだ。
お前が、そんな事するわけない。
あんなに一途な奴が。
鬱陶しいわけがない。
こいつは、何も知らないんだ。
どんなにお前に想われているのか。
そう思うと、俺は目の前にいるそいつを殴っていた。
「何も、知らねぇくせに…。あいつがどんなにテメェの事を想ってるのか、知らねぇくせに! お前の事が好きだって言って、泣いたんだぞあいつは! そんな奴を、鬱陶しいから捨てる? 当然の事だぁ? ふざけてんじゃねぇぞ!!」
俺が、お前の恋人だったら。
お前を離しはしない。
泣かせはしない。
笑顔だけを、与えてやりたい。
お前には、いつでも笑っていて欲しい。
そのためなら俺は、なんでもする。
「頼むから――あいつを、幸せにしてやってくれよ……。俺じゃ、出来ないんだよ……」
お前が強く想ってるのは俺じゃなくて。
目の前にいる、こんなクソみたいな奴。
お前の綺麗な想いを、鬱陶しいと言う奴。
俺じゃお前を、笑わせる事は出来ない。
俺じゃ、ダメなんだ。
だから、俺はこうするしかない。
「お前、本当にあいつの事――嫌いなのかよ?」
「……仕方ねぇだろ! 思わず勢いであんな事言っちまったんだよ! 嫌いなわけねーだろーが! 俺、苛々してる時とか、思ってもねぇ事言ったり突き放したりしちまうんだよ!」
「――なら、あいつの所に行ってやり直そうって言えよ。それで、あいつを幸せにしてくれ」
それだけ、言い残して俺はその場を去る。
さて、これからどうするか。
もう、あの場所には行けないな。
ここから――
沖縄から出るか。
そう思って俺は一度、沖縄から出た。
こうなったらもう、お前に俺は必要ない。
だから、俺はこの地を去る。
それから二年くらい月日が経って。
その間俺はずっと、お前の夢を見てた。
瑠璃色の海と空の中で笑う、お前。
だから本当に最後にするつもりでもう一度だけ。
もう一度だけ。
あの場所に行ってみた。
あの瑠璃色の海と空を見て、お前の事だけを想い続けると誓おう。
そう思って行ってみると。
そこに行って、驚いた。
お前はまだ、そこに居たんだ。
初めて会った時みたいに、お前は寝てた。
しかも、目尻には涙を浮かべて。
また、あの恋人と何かあったのかと思って俺は。
気が付くとお前の涙を指で拭っていた。
どうしようか。
このままここに居てはいけない。
お前が起きる前に、ここを去らないといけない。
そう、思うのに。
お前を一人置いてここを去るわけにはいかなかった。
どうしようかとお前の顔を見つめていると――
「ん……」
お前が目を、覚ました。
どうしようかと俺が動揺していると。
「――これ、夢だ」
お前はそう言った。
「夢?」
「だって人魚、水着じゃないじゃん」
そう言われて、初めて気付く。
あの時は泳ぎに来て、休憩のためにここに寄ってたから。
いつも水着姿だった。
でも今日は普通に服着てるから、そう思ったんだろ。
――つーか、やっぱり俺は人魚なのか。
「どうしたの? 人間に生まれ変わってきたの?」
「――最初から、人魚じゃねぇって言ってるだろ」
「嘘。だって、僕の前から消えた。まるで泡みたいに」
「それは――」
「人魚みたいに、僕の幸せを祈って消えた」
「――――」
「僕、あれからずっと待ってたんだよ」
「――――」
俺は、何も言えなかった。
その代わりに、ただ強く思う。
お前がずっとここで待ってた理由が、俺のためだと良いと。
俺と一緒に居たいから、待ってたって。
お前の口から聞きたい。
「でも、とりあえずさ。これだけ――いい?」
「――なんだよ?」
その瞬間。
固い鞄が突然俺の顔面に襲って来て。
俺はそれをかわせられず。
「がっ!」
モロにお前からの攻撃を食らった。
「なんで急に居なくなったんだよ!! どれだけ僕、ここで待ったと思ってるんだよ!! あれからずっと、待って…たん…だからぁ……」
そう言ってお前は、泣き出してしまった。
「あんなの、全然嬉しくなんかない! だって、僕……人魚が好きだって気付いたからぁ……。だから、あの日からずっと、待ってたん……だからぁ……」
そう言って、まるで子供みたいに何回も鞄で俺の頭を殴り付けて来る。
なんだコレ。
これこそ夢か?
「なぁ、聞いてもいいか?」
「なぁに…?」
鼻を啜って言うお前に俺は確認する。
「これ、夢じゃないよな?」
「ばかぁ!!」
そう言って、渾身の一撃を。
いや、夢としか思えない。
あの日お前は、恋人の事が好きだって言って泣いたんだ。
それから俺の事を好きだと、思えるか?
あんな風に泣かれたら、俺の事なんかなんとも思ってないって思うだろ普通は。
思ってるなら、あんな事言うわけないだろ普通は。
「――本当に、俺の事好きだって…言ってくれるのか? 本当に、そう思ってくれてるのか…?」
俺がまたそう確認すると。
お前はボロボロ泣き出して。
俺に抱き付いて来た。
「人魚が好きなんだよぉ…。人魚じゃないと、ダメなんだよ……」
それを聞いて、安心した。
この温もりだって、夢じゃない。
嗚呼、俺は――
こうなる事をずっと願ってたんだ。
俺はお前を抱き締め返して。
「ごめんな。俺も、お前が好きだよ。だから、ごめんな……」
「もう、消えないでよ。泡になんか、ならないで」
「――なってない。なってないから、ここにいるんだろ?」
「本当に、もう居なくならない?」
「約束する。もうお前を離しやしない」
そう言って俺は、お前にキスをする。
それは、誓いのキス。
お前と出会った、この幻想的な場所で。
瑠璃色の海と空。
美しい星々と満月の中。
静かな波の音が聞こえる世界で。
お前を離さないと約束する。
もしも、お伽話の人魚に続きがあるならば。
今度生まれ変わった時は人間に産まれて。
王子様と結ばれれば良いと、俺は願う。
俺達が、そうなったように――




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~ Comment ~

後半が・・・!!

またもや、ここに参上したのはユーリカンです。
もう、大好きなお話で。
良いですよね、お互いの心情が伝わって、人魚君の想いに、ウルッときました。
いつだって、離れた時に大切な何かに気付いたりするんですよね。
人魚君の想いが伝わった後半で、やっぱりウルッとくるというwww。
胸キュンというやつですね、分かります。
これからも何度も何度も、この場所に訪れて二人で瑠璃色を眺めるのだろうなぁと想って、胸キュン。
とても、愉しく読ませて頂きました!!
今日は、残念ながらここまでしか読めませんでしたが・・・次もまたコメントします!!
という事で、また参上しますwww。
では、愉しいお話をありがとうございます!!

Re: コメントありがとうございます!

またまたユーリカンさんの参上に参上仕った久遠瑠璃子です!
お気に入りのお話になったようで、良かったです。
そう言ってくださると人魚も少年も喜ぶ事でしょう。
泣いてくださると、嬉しい限りです。
でも今回の終わり方は自分でもそれなりに納得してますww
今までに無い終わり方だったと思うんでw
特に少年の方はw
そうですね。
この二人は色んな事があっては、瑠璃色の海と空を見るために何回も来る事でしょう。
そうやって、思い出を重ねていくのでしょう。
はい、また来てくれると嬉しいです。
またのお越しをお待ちしております。
次に来た時も愉しいと思ってくれるような話を書くように努力します。
それではまたお越しくださいませ。
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